皆さんはサービスシューズをご存知ですか?
サービスシューズは軍で使われていた革靴のことです。戦闘用ではなく、軍の式典の場などで使われていました。そのため、プレーントゥやストレートチップといったシンプルなデザインです。
また、ラストにも特徴があります。様々な人種のいる軍人に合わせるために、トゥにゆとりがあり土踏まずが少し絞られています。つまり、幅広の足型といわれる日本人にもあいやすいラストです。
そして、サービスシューズの中でも特に人気があるのが、アメリカ軍のサービスシューズ。年代によって少しディティールが違うものの、基本的にはプレーントゥでガラスレザーが使われています。
しかし、それらは数十年前に作られていたものです。現在では生産しているわけでもなく、手に入れるのが難しいです。しかも、年々デッドストック品は見つかりにくく枯渇状態です。今から手に入れるには…難しそうです。
ということで、今回はヴィンテージのサービスシューズではなく、現行で販売られているサービスシューズを紹介します。現行サービスシューズという言葉が正しいかわかりませんが、サービスシューズを基に、または、ミリタリーラストを使った現行モデルを紹介します。
では早速見ていきましょう。
目次
サービスシューズとは
サービスシューズは軍の式典などで履かれていた革靴のことです。
国や年代によってディティールが少し違います。ここではサービスシューズの中でも人気のあるアメリカ軍のサービスシューズのディティールを少し紹介します。
アメリカ軍のサービスシューズは1940年〜1990年の間に造られていました。
基本的なデザインは…
外羽根式のプレーントゥです。

外羽根式とは靴紐を結ぶ部分(羽根)が後付けされたもの。
そしてプレーントゥはその名の通り、装飾がないデザインのことを表します。
アッパーの革はガラスレザーが使われていることが多いです。ガラスレザーは樹脂をコーティングしたもので、光沢感があり、雨に強いレザーです。
また、ディティールの違いとしては
- アイレットの数
- アウトソールの種類
- ヒールの形状
となっています。
年代によってディティールが違いますが、今回は深く言及しません。
サービスシューズの魅力
サービスシューズの魅力は…
- シンプルなデザインでいろんな服装に合わせやすい
- 冠婚葬祭やビジネス、カジュアルでも履ける
- ウンチクを語れる
- 履きやすい
といった魅力があります。
最初の2つは被る部分があります。アメリカ軍のサービスシューズは黒のプレーントゥであるため、どんなコーデにもマッチしやすいです。実際、軍の式典で履かれていたこともあり、現代の冠婚葬祭やビジネスシーンで履いても違和感はありません。むしろ正しい合わせ方だと思います。
さらに、ラストの特徴として少しトゥがぽってりしています。ビジネスで履くような細身のスラットした革靴よりも、サービスシューズの方がボリューム感があるのでカジュアルな服装でも、ビジネスシューズっぽく見えません。ジーンズやチノパン、スラックスなどいろんなパンツに合わせることができます。

使い勝手がいいです
そして履き心地もいいです。トゥにゆとりがあり、土踏まずが少し絞られていることから、どんな足型にもあいやすいです。フィットした革靴というのは履き心地がよく歩きやすいです。
そして革靴というのはブランドによって様々なラストがあります。フィットするラストを見つけるのは意外と難しいです。そんな中で万人にあいやすいサービスシューズのミリタリーラストというのは、最初に選ぶのには最適だと思います。
サービスシューズの枯渇問題
アメリカ軍のサービスシューズは約60年間に造られました。そして現在では生産していません。
そのため、新しく造られることはなく、見つけることしかできません。それでも数に限りがあるため、年々デッドストック品となると見つかりにくくなります。しかも、見つかったとしてもサイズの問題があります。やはり日本人に合う、比較的小さいサイズというのは見つかりにくいです。
今後はさらに見つかりにくい状況になることは容易に想像できます。
じゃどうすればいいのか?
それは…
「現行のサービスシューズを探す」です。
ここでいう「現行」というのは、各ブランドでサービスシューズを基に造られたモデルやミリタリーラストを使って造られたモデルのことを表しています。
ということで、現行のサービスシューズを見ていきましょう。
現行サービスシューズ
現行サービスシューズを選ぶ利点としては、ビンテージサービスシューズに比べ、マイサイズが見つかりやすいことがまず挙げられます。どんなにいい靴でもサイズが合っていなければ履けません。マイサイズが見つけやすいのは現行サービスシューズの大きな利点です。
他にもデザインや素材、色を選ぶことができます。基本的にはプレーントゥのブラックをベースにしたモデルが多いですが、素材や色を変えたものもあります。また、ミリタリーラストを用いて、プレーントゥ以外のデザインにしているものもあります。
ミリタリーラストを気に入って、他のデザインのものも欲しい場合には現行のサービスシューズ(ミリタリーラストを使ったもの)の中から選ぶことができます。
しかし、現行サービスシューズにも悪い点があります。
それが…
価格です。
ビンテージサービスシューズは、1万円以下で買えます。高くても3万円以下というのが相場です。
それに比べると現行のものはブランドが造っているモノですので、各ブランドが設定する価格となります。ビンテージサービスシューズの5倍〜10倍くらいするものもあります。
それでも、手に入れる価値はあると思います。
これから紹介するブランドとモデルを参考にして、自分にあった一足を見つけてください。
Alden:オールデン
53711

こちらはAldenの53711というモデル。
Aldenは1884年、アメリカのマサチューセッツで創業したブランド。100年以上もの歴史のある老舗のブランドです。
ホーウィン社のコードバンを使ったモデルが多いことでも有名ですが、こちらの53711はカーフ(牛革)を使ったモデルです。
ラストは379X。通称ミリタリーラストと呼ばれるラストです。


特徴的なのはトゥがラウンドしていること。
Aldenはトゥのラウンド感が特に際立っているように思います。トゥにゆとりがあるため、足幅な方でも窮屈さを感じないと思います。またヒールカップが少し小さめで、日本人の足型にもフィットしやすいです。

また、ヒールのデザインはドッグテイルとなっており、シンプルな見た目です。
アメリカ靴を代表するブランド。Aldenが好きな方には是非とも手にとって欲しいモデルです。
そして、Aldenではミリタリーラストを使ったモデルが他にもあります。
こちらのプレーントゥのデザインで、素材、色違いはもちろんのこと、ブーツやVチップ、ロングウイングチップなどもあります。ミリタリーラストの履き心地が好きな方やすでにプレーントゥをお持ちの方は他のデザインもおすすめです。
しかしながらAldenのネックとなる部分は…
価格です。
日本国内定価で
カーフモデルが約10万円
コードバンモデルが約14万円
となっています。
1万円以下で買えるサービスシューズから比べると10倍ほどの値段。
Aldenは作りが雑であったり、革の個体差があったり、決してコスパのいい靴ではありません。ですが言葉では言い表せない独特の魅力を感じます。そこに価値があると思います。
価格の面でいうと絶対に買った方がいいおすすめモデルといは言い難いですが、Alden好きの方には是非とも履いて欲しいモデルです。
Redwing:レッドウイング
MIL-1 BLUCHER OXFORD

レッドウイングのMIL-1 BLUCHER OXFORD。
通称「ミルワン」です。
ブーツのイメージが強いレッドウイングですが、1930年代から短靴の展開を始めています。

すでに90年ほどの歴史があるんですね
このモデルは「MIL-1ラスト」という米軍でオフィサーシューズ用に使われていたラストをベースに造られたオックスフォードシューズです。トゥに幅を持たせつつ、ノーズが伸びている特徴があります。トゥの丸みが少し抑えられて感じがし、スマートに見えます。
アッパーレザーにはへファーハイド(若い未出産の雌牛の皮)をレジン系でコーティングしたエスカイヤ・レザーが使われています。
雨にも強くなるため、天候を気にせず履けるのが魅力的です。光沢感が強く、あまりお手入れをしなくても艶感を楽しむことができます。そのため、お手入れがめんどくさいと感じている方にもおすすめです。

履きこむとこのような感じになります。
深い皺が入っています。大胆な皺が入るため、好みがわかれるかもしれません。個人的には無骨な感じがし、ジーンズやチノパンと合わせるとかっこいいと思います。スーツに合わせるにはちょっと…と思うところはあります。
さらにアウトソールにはラバーが貼られています。グリップ力が増すため、滑りやすい路面でも快適に歩くことができます。また雨にも強くなるため、雨の日に履いてもいいと思います。耐久性にも優れているため、ガンガン履いてもいいですね。
個人的にはこのサイドから見た時の羽根に施された3本ステッチが好きです。2本ステッチが主流だと思うので、細かいディティールですが個性が出ている部分です。
さらに、ヒールはTバックとなっています。T字に革が縫い付けられており、こちらも個性的です。
オリジナルのサービスシューズにも採用されているディティールです。
そして、値段は…
50,600円
先程のAldenに比べると半額ほどで買うことができます。長く履ける靴ですので、この価格の価値はあります。
BLACK SIGN:ブラックサイン
Navy Last Dress Oxford Shoes

BLACK SIGNのプロダクツは、ビクトリアから第二次世界大戦前までのアメリカン・カルチャーやライフ・スタイル、そしてその時代の洋服のディテールがソースとなっています。
※BLACK SIGN HPより
ミリタリーのサービスシューズを基に造られたオックスフォードシューズです。
生産は日本国内のドレスシューズファクトリーということで日本製になります。
木型はオリジナルのネービーラスト。

見た感じで、小指が来る部分がゆとりがあり、そこからトゥに向かって細くなっっています。しかし細すぎず適度にラウンドしています。レッドウイングのミルワンに近そうなラストです。

品の良さそうなラストに感じます
また、ヒールも絞り込まれている感じがします。日本人は踵が小さめですので、それに合わせているように思います。

そして、ヒールのデザインはTバックです。レッドウイングのミルワンと同じディティールです。

ソールは、5mm厚Armyソールを復刻させたセパレートソールです。耐久性が良さそうです。
ラバーソールですと雨の日にも履けるのでいいですね。
アッパーにはボックスカーフが使われています。ガラスレザーほど光沢はないものの、お手入れを繰り返すことでいい感じの艶が出ると思います。経年変化が楽しみなレザーだと思います。
価格は…
74,800円
日本製の革靴としては結構な値段がします。木型をオリジナルにしたことや、革をガラスレザーではなくボックスカーフを使用しているところなどこだわりが感じられます。
この価格に見合ったクオリティが備わった一足だと思います。
BUZZ RICKSON’S:バズリクソンズ
BR02146

BUZZ RICKSON’S(バズリクソンズ)とは、1993年に誕生したフライトジャケットの歴史と誇りを追求するブランド。その復刻作業は当時のMIL SPEC(軍用という過酷な環境に耐えうるよう定められた規格)に基づいたもので、糸の紡績から織り、生地の素材、各部の軍用パーツ、全体のフォルムに至るまで徹底的にこだわり、一着一着にクラフツマンシップを込め、ヴィンテージのフライトジャケットが持つ魅力を再現している。
※BUZZ RICKSON’S HPより
復刻フライトジャケットが有名なブランドですが、その他にもチノパンや革靴などのミリタリーアイテムの復刻を手掛けています。
その中で、第2次世界大戦時に履かれていたサービスシューズを再現した革靴があります。

ウィズがEということもあり、ボリューム感のあるラストに仕上がっています。
アッパーレザーは上質なカーフ。キメが細かい革で艶感を楽しむことができます。オリジナルではガラスレザーが使われていることが多いですが、BUZZ RICKSON’Sではカーフを使用しています。カーフの方が経年変化を楽しむのにいいと思います。
またアウトソールは耐久性に優れたラバーが貼られています。雨の日でも安心して履ける仕様です。また、U.S.Aと書かれているのもポイントですね。履いたら見えない部分ですが、こういうのが書かれているだけでも男性は嬉しいものです。

ヒールのデザインはドックテイル。シンプルなデザインです。
そして内側のライニングには…
オリジナルのサービスシューズと同じようなLot番号やサイズ表記が書かれています。

ここにブランド名が書かれているのも面白いですね
実際に1944年当時にBUZZ RICKSON’Sがサービスシューズを手掛けていたのではという気持ちになります。細かなディティールが男のロマンを感じます。
コバに茶色が混じっているので、スーツに合わせて履くのは職種によってはNGかもしれません。少しカジュアル感があります。個人的にはBUZZ RICKSON’Sが復刻しているアメリカ軍のチノパンなんかと合わせるといいと思います。
そして価格は…
49,500円
オリジナルのサービスシューズに近いディティールが盛り込まれているので、そういった方におすすめです。
BROTHER BRIDGE:ブラザーブリッジ
FURANTSU (フランツ)

ブラザーブリッジは浅草を拠点とし、日本の伝統と技術を継承しているブラドです。
それぞれの靴に対して歴史的背景やストーリーを持たせているのが特徴。
このフランツというモデルは「最も美しいと言われている1940年代のUS.NAVYがモデル」です。
丸みが抑えられながらも適度にラウンドしたトゥはとても美しいです。

カラーはブラックとブラウン(スエード)の2種類。
さらにブラックに関しては素材がホースハイドとキップから選ぶことができます。
ホースハイドは馬革のこと。馬革といってもコードバンとは異なります。牛革に近い質感でレザージャケットによく使われる素材です。軽さ、耐久性、柔軟性に優れているのが特徴。ブラザーブリッジのホースハイドはポーランド産のものが使われています。茶芯仕上げで経年変化を楽しむことができます。使い込むと表面の色が剥げ茶色の芯が見えてきます。
キップは牛革のことで生後6ヶ月から2年以内の牛から取られた革のこと。ちなみにカーフは生後6ヶ月以内の仔牛の革。

ヒールはTバッグとなっています。オリジナルのサービスシューズにもあるディティール。シンプルなプレーントゥですのでデザインのアクセントにもなります。

ソールは全面ラバーソール。滑りにくさと耐久性があります。ハードの使い方をしたい人におすすめです。
ラバーといっても厚みは抑えられているので、全体的なフォルムに溶け込んだスタイリッシュな感じになっています。
価格は…
49,500円
全体的に落ち着いたシンプルな印象を持つモデル。オンオフ兼用で使え、ソールもラバーなので天候を気にせず使えます。そう考えるとお買い得な価格かもしれません。
#15066 PLAIN TOE BLUCHER

「古き良きアメリカ」の普遍的なデザイン、伝統的なディテールにこだわりながら、素材、製法に妥協せず作っている日本のブランド。靴は2015年より浅草で作られています。
靴縁別注が話題になったブランドです
ウィールローブのラスト314は1940年代のサービスシューズをもとに作られています。日本人の足型に合うように改良が加えられているため、履き心地もいいラストに仕上がっています。
それでいて、フォルムはぽってりとしています。
デザインも少し特徴があり、他ブランドのサービスシューズとは羽根のつき方が違っています。

サイドから見ると、革の切り替えしがなく一枚革で羽根が作られたデザインです。すっきりとした見た目になります。それでいて鳩目がついているのでカジュアルな感じがあります。
上品さと重厚感があり、ジーンズスタイルにもマッチするモデルです。

ソールにはラバーが貼られており、天候を気にせず履くことができます
アッパーの革はクロムエクセルレザー。茶芯になっているため、経年変化を楽しむことができます。
価格は…
40,000円
日本製の革靴としては比較的お手頃な価格ではないでしょうか。
SKOOB:スクーブ
SMIL-001
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スクーブはラストの設計から素材の選定、パターン作成、メイキングまで開発・生産を一貫して東京の浅草にある自社工場で行っているブランド。
見た目の美しさだけでなく、フィッテングや耐久性、コスパも含め、全ての要素を考えベストな靴作りをしています。どちらかと言えば職人気質なブランドです。
展開されているモデルはブーツやカジュアル使いしやすい短靴がメインです。
ここで紹介するのはサービスシューズです。
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ラストは1940〜50年代のU.S.Marine Corp(海兵隊)に支給されていたサービスシューズのマンソンラストを日本人の足型にも合うように改良したもの。
つま先はややスクエアトゥ気味でふっくらしておりボリューム感があります。この辺はブーツライクでもあり、カジュアル使いがしやすいディティールでもあります。
革は「BOARDED KIP LEATHER」と呼ばれる手作業で揉み加工を施し、シボ感を強調したレザーが使われています。近くで見ると細かな凹凸が見られ、無骨さの中にも上品さを感じます。
シボ革は傷が目立ちにくい特徴があるので、あまり神経質にならずに履くことができます。道具といった感覚でガンガン履いていけます。
価格は…
53,900円
先程の日本ブランドに比べるとやや高めになりますが、他ブランドとは違った素材感やトゥのボリューム感が気に入った方におすすめです。
まとめ
現行のサービスシューズはいかがだったでしょうか。
オリジナルのサービスシューズは年々見つかりにくくなっているため、欲しくても見つからなくなっています。
しかし、サービスシューズの履き心地、歴史的背景、雰囲気など魅力は多いです。
現行のサービスシューズもオリジナルに引けを取らない出来栄えだと思います。また、現行品は新品となるため、これから自分で育てられる楽しみがあります。
革もオリジナルだとガラスレザーがほとんどですが、現行品は革の種類を選ぶことができます。自然な艶を楽しむことができるカーフや温かみのあるスエード、光沢の強いコードバンなど選べます。もちろんガラスレザーのものもあります。
サイズに関しても、マイサイズが見つかります。オリジナルは個体差やサイズ欠けが多く履き比べることが難しいです。その点では現行品はサイズ毎に履き比べることができます。自分の足にあったサイズを選ぶことができます。
オリジナルが見つからないから現行品を選ぶのではなく、現行品の良さを知って選んでみてはいかがでしょうか。
ということで今回はこの辺で