- 日本の革靴ブランドが知りたい
- ラッドシューズにどんなモデルがあるか知りたい
- ラッドシューズの特徴を知りたい
皆さんは日本の革靴ブランドをどれくらい知っているでしょうか?
意外と片手で数えられるくらいしか知らない人も多いのではないでしょうか。
革靴といえば欧米ブランドが人気があり有名です。
なので欧米のブランドはよく知っていても日本のブランドはよく知らないと思う方は多いはずです。
そんな中で今回紹介するブランドは、日本のブランド。
Ruttshoes(ラッドシューズ)
という日本の革靴ブランドで、浅草で作られています。
実は浅草は靴作りの街でもあります
なので浅草を拠点にしている革靴ブランドはいくつかあります
知名度は低いと思いますが革靴好きなら知る人ぞ知るブランドでもあります。
私自身は以前から気になっていたブランド。そして非常にこだわりが強いブランドです。
そんな中で、ラッドシューズのディレクターである川村さんとお話しする機会があり、そのこだわりを聞いてきました。
この記事ではラッドシューズの特徴やこだわり、そして展開してる3つのモデルを解説していきます。
Ruttshoes(ラッドシューズ)とは
知らない人もいるかもしれませんが浅草は靴作りの街でもあります。
そんな靴作りの街から生まれたのがラッドシューズです。
ストーリーについて詳しく知りたい方はラッドシューズのHPもぜひご覧ください。
ラストのこだわり
ラストは日本語にすると木型。
上の写真を見るとわかると思いますが木を靴の形に削り出したものです。
このラストから靴の形が決まってきます。
大手の革靴ブランドですと、さまざまなラストを有しており、靴のデザインによってラストを使い分けることが多いです。
しかしラッドシューズはラストがなんと…
1つしかないのです
そのラストが…
168M
浅草といえば日本らしい場所。それにちなんで、日本らしいラスト名を考えたところ「いろはにほへと…」の168(いろは)をラスト名にしたようです。
さらにそれをモディファイドしたことから頭文字のMを取って、168の後ろにMをつけて168Mとしています。
このラストは1940年代のミリタリーラストをベースにして、曲線美を意識して作られています。
履き心地はもちろんですが、見た目の美しさにもフォーカスして作られたラストです。
アーチの部分を絞り込み、甲の部分をつま先側を薄くして、そこから履き口に向かってせりあがらせている形状です。
ラストについての説明はラッドシューズのHPでも解説されているので、興味のある方はそちらもご覧ください。
そしてラッドシューズはこの1つのラストを用いて3つのデザインの靴を展開しています。
他ブランドではデザインによってラストを変えているのにも関わらず、ラッドシューズは1つのラストで複数のデザインを作っています。
不思議とどんなデザインにもマッチするそんなラストだとも川村さんは語っていました。
実際に3つのデザインを見ましたが、それぞれのデザインにマッチしている感じがありました
製法のこだわり
革靴の製法は大きく分けると、アッパーとソールを
- 貼り付ける製法
- 縫い付ける製法
この2つに分かれます。
ラッドシューズではこのセメント製法ではなく、縫い付ける製法を選んでいます。
そして縫い付ける製法もいくつかあり、ラッドシューズでは…
- グッドイヤーウェルト製法
- ハンドソーンウェルト製法
この2つの製法を使い分けて作っています。どちらも高級革靴でよく用いられる製法です。
この製法を使っているだけでも良い革靴と評価されることが多いですが、ラッドシューズはさらにこだわりを持っています。
それが吊り込みです。
グッドイヤーウェルト製法は、基本的に機械を使って吊り込みを行います。
そのため、機械での吊り込みではラッドシューズのラストの特徴である曲線美を現すことが難しいです。
そこでラッドシューズでは曲線的な形状にするため、手作業で吊り込みを行うことを選択しています。機械で吊り込みをすればすぐに終わる工程ではありますが、それを手作業にして手間暇をかけることで理想的な曲線美を実現しています。
さらに、その曲線美を追求するため、ハンドソーンウェルト製法も採用しています。完全手作業で吊り込みやウェルトのすくい縫いなどを行います。
川村さん曰く、ラストの美しさを表現するために、グッドイヤーウェルト製法だけど手作業での吊り込みを行い、さらにラスト形状を完璧に表現するためにハンドソーウェルト製法にしたと語っていました。
実際にグッドイヤーウェルト製法とハンドソーンウェルト製法でどれくらい違うのかを見てください。
どうでしょうか?
同じラストを用いているにも関わらず製法の違いで、ここまで形状に違いが現れています。
やはりハンドソーンウェルト製法の方が曲線美がしっかりと出ており、立体的でメリハリのついたシルエットとなっています。
グッドイヤーウェルト製法も単体で見れば、曲線美は表れているものの、ハンドソーンウェルト製法のものと比べてしまうとやはり見劣りはしてしまいます。
そしてこれを見ると、美しく作れるハンドソーンウェルト製法が優れていると思いがちですが、そうでもありません。
対してグッドイヤーウェルト製法は良くも悪くも余白が生まれているため、ハンドソーンウェルト製法だと合わないけどグッドイヤーウェルト製法なら合うといった方もいるようです。
この辺の違いは実物を見て触れて、さらに川村さんの話を聞くことで、わかってくる部分でもあります。
私の説明だけだと不十分なところもあるので、気になる方がいたらぜひラッドシューズのお店に足を運んでみてください
厳選された3つのデザイン
大手の革靴ブランドを見ると様々なデザインの革靴を見ることができます。
しかし、ラッドシューズでは3つのデザインを主に展開しています。これから徐々に新作を出していくようですが、現時点(2023年2月現在)では3つのモデルがあります。
3つのデザインに共通するのは…
- 168Mのラストが使われている
- 外羽根である
ことです。
そして、製法はグッドイヤーウェルト製法かハンドソーンウェルト製法を選ぶことができます。
しかし、今後はハンドソーンウェルト製法はプレーントゥの1型に絞るとも川村さんは語っていました。
タイムズハンドという取り組みが本格化したらハンドソーンウェルト製法はプレーントゥのみになると思います。
また、ラッドシューズではThe FIVE COUNTという取り組みもしています。
これは月に5足だけ、ホーウィン社のシェルコードバンを革の状態から見て選んで、デザインを決めてオーダーするものです。
このような状態のコードバンから、自分が気に入ったものを選ぶことができます。意外と革一枚一枚で色ムラなどがあったりして表情が変わっています。
といった前置きはここまでにして3つのモデルをそれぞれ紹介していきます。
RIDLEY(リドリー)
ラッドシューズのアイコン的なモデルが…
RIDLEY(リドリー)というVチップです。
甲の部分にあるV字のステッチが特徴的なデザインです。
このステッチをモカ縫いと言いますが、リドリーは特徴的なモカ縫いです。
2枚の革を手を合わせて拝むようにして縫う「拝みモカ」と革を摘んでその両端を縫う「つまみモカ」の両方の特性を持っているようなオリジナリティ溢れるモカ縫いです。
シャープなV字と立体的なモカ縫いの組み合わせは、ありそうでない、いやっ見たことがないような独特なものになっています。
履いた時にもVチップは存在感があり、カジュアルな装いにもバッチリとハマってくれます。
他とは違うものが欲しいと思っている方は、ぜひリドリーを選んでみてください。
また、個人的にはコードバン仕様のものを選ぶのが良いと思います。
コードバンのVチップで真っ先に思い浮かぶのはAlden。そしてAlden以外だとなかなかVチップのコードバンは見ない気がします。
Aldenだと17万円ほどしますが、ラッドシューズではコードバン仕様で12万円ほど。どちらも高いは高いですが、コードバンの革靴が12万円で、しかも自分でコードバンを選ぶ体験ができます。
Aldenを手にする喜びと同等かそれ以上のものが得られると思うので、コードバンのVチップをお探しの方はぜひリドリーを選んでみてください。
MILES(マイルス)
一足は持っておきたいシンプルなプレーントゥの…
MILES(マイルス)です。
シンプルなデザインゆえにラッドシューズのこだわりのラスト形状を体現しているモデルともいえます。
これはタイムズハンドの取り組みでもあります。
ハンドソーンウェルト製法の方が木型を忠実に再現することができます。またカーフは柔らかさがあるため、吊り込みがしやすく、木型の形状に合いやすくなります。
そのため、ラッドシューズの168Mラストの曲線美をしっかりと表現してくれます。
また装飾のないシンプルなデザインであるため、シルエットがわかりやすくなっています。
実物を見ると、その美しさに目を奪われます
個人的にはラッドシューズの一押しのモデルです。
しかもお値段が10万円を切る値段。ハンドソーンウェルト製法は高級革靴ブランドやビスポークシューズに用いられるもので、10万円以下で手に入れるのは難しいです。
それをラッドシューズでは71,500円で販売しています。
高いは高いですが、昨今の欧米ブランドに比べると良心的なお値段です。
FRANCIS(フランシス)
こちらはパンチドキャップトゥの…
FRANCIS(フランシス)です。
そしてこのフランシスは通常のパンチドキャップトゥとは違ったデザインが入っています。
それが羽根の部分から一直線に伸びるステッチ。
これが特徴的です。
私はこういったデザインのパンチドキャップトゥは初めてみました。
そして、このデザインのAldenをたまたまお客さんが履いて来店されたことがあったようで、その時に写真を撮り、フランシスというモデルが誕生しました。
しかも、このデザインを靴博というイベントで発表した時に、その時のお客さんが同じデザインのAldenを履いて会いに来てくださったらしく、川村さんにとっては思い入れのある一足となっています。
またフランシスは作るのが難しいとも話されていました。
上の写真のようにアッパーの革は縫い合わせます。そして、それをラストに合わせた時にうまく直線になるようにしなければなりません。
アッパーの縫製と吊り込みをうまく合わせなければいけないため、作るのが難しいようです。
また168Mラストは土踏まず部が絞られているため、そこのアーチとステッチが被らないようにしたり、アーチの曲線美を邪魔にしないようにするための微調整も幾度かしたようです。
また、つま先部のギザギザ模様のピンキングとサイドのピンキングの大きさも微妙に変えていたりします。
細かい部分まで作り込んで作られています。
個人的にはデザインの珍しさとAldenをデザインソースにしていること、さらに川村さんから聞いた話から、欲しくなった一足です。
こちらもコードバン仕様のものをオーダーできますが、個人的にはユタカーフで作られたものが気になりました。
細かなディテール
3つのデザインについてざっと紹介しましたが、実は細かなディテールがあります。
3つのデザインに共通する部分なので、ここで紹介していきます。
羽根のステッチ
実は羽根の部分のステッチの太さを微妙に変えています。
一つだけ太いのに変更することでちょっとした違和感を感じ、それが全体的な「なんかいい雰囲気だな」と感じさせてくれます。
これは言われないと気が付かないと思いますし、言われても「そうですか…」くらいの反応になりそうですが、ちょっとした違いが靴の雰囲気作りに一役買っている気がします。
左右で違う羽根の大きさ
これに気がつく人が果たしているのかどうかはわかりませんが、実は羽根の大きさが左右で異なっています。
なぜ左右で大きさを変えているのかというと、立体にした時に羽根の位置が真ん中に来るようにするためです。
このように紐を縛った時に羽根と羽根の間の隙間がつま先にかけて一直線上にあります。
羽根位置の調整をするために羽根の大きさを変えています。
内側のディテール
脱いだ時にもきれいに見えるように内側にもちょっとしたディテールがあります。
履き口のところはシボ革のブラウンを使い、踵の部分はスエードを使っています。
ブラウンはラッドシューズのイメージカラーでもあるようで、ラッドシューズの箱もこの色です。
色に統一感を持たせることで、ラッドシューズの世界観を演出している感じがします。
製法で違うウェルトの目付け
実は製法によってウェルトの目付けも違ってきます。
よく見るとウェルトのギザギザした形状が違うのがわかるかと思います。
グッドイヤーウェルト製法の場合は、すでにギザギザが入った状態のウェルトを取り付けます。
対してハンドソーンウェルト製法ではギザギザのないプレーンなウェルトを使用し、後から職人の手で目付けをします。
そのため、製法によってウェルトの目付けが違っています。
アーチ部のコバだけ丸みがある
168Mラストは土踏まず部の絞られた曲線が魅力的です。
ラスト形状を最大限に表現するためのディテールと言えます。
といった感じで、細かなディテールを紹介しました。
細かすぎて伝わらない部分もあるかと思いますし、実は他にもあるのかもしれません。
そういった細かな部分の説明は川村さん本人の口から説明してもらうのが良いと思います。
The FIVE COUNTについて
デザインのところでも少し触れましたが、ラッドシューズはThe FIVE COUNTという取り組みをしています。
簡単にいうと月5足限定でコードバンの靴をオーダーできるといったものです。
しかもコードバンは実際に自分の目で見て選ぶことができます。
こういった状態のものから、自分が気に入った革を選ぶことができます。
実はコードバンは個体差が結構あります。同じ色といってもムラがあったり、色味が微妙に違ったりしています。
そういった部分を靴になる前の一枚の革の状態から選ぶことができます。
また、一枚の革の中で厚みも異なります。厚い部分もあれば薄い部分もあります。
そして、そういった革の厚みで履いた時にできる履き皺が左右で変わる可能性があります。
それを極力なくすために川村さんが選んだ革に対して、最初に、履き皺が入る部分を選定してくれます。
左右で厚みが均一でかつ、厚みのある箇所を選んでくれます。
実際に切り抜かれた革も見せていただきました。
こういった感じで一枚の革からアッパーに使う革を裁断します。
ところどころ、傷がある箇所は避けて革を裁断しています。
また上の写真を見ると余った革が見られますが、そういった部分の革を使って、ノベルティを作ってくれます。
シューツリーの履き口から見える箇所に革を貼り付けてくれたり…
ブラシにも革をつけてくれたりします。しかもホーウィン社の刻印付きです。
コードバン靴をオーダーする際は、記念にシューツリーやブラシも併せて購入するのがおすすめです。
選べるカラーも複数あり、コードバンの定番カラーであるNo.8のバーガンディとブラック、そしてAldenではレアカラーと呼ばれるバーボンやダークコニャック。幻のカラーと呼ばれることもあるNo.4。ちょっと変わったカラーのグリーンやネイビーなどから選ぶことができます。
在庫状況によっては選べない時もあるようですが、手に入れにくいと呼ばれるカラーも選べるのは嬉しいところです。
個人的にはダークコニャックの色味が気になりました。
またAldenでは幻のカラーと呼ばれるNo.4も気になります。赤みが強いので、ちょっと使いにくそうなカラーではありますが、単体で見た時のカッコよさは欲しくなります。
グリーンという選択肢もありますが、個人的にはちょっと抵抗感があります。おそらく持っていていも観賞用になりそうです。
すでにコードバンの靴を持っている方は定番カラーではないものから選ぶと良いと思います。
そして初めてのコードバンという方はNo.8のバーガンディを選んでみるのが良いのではないでしょうか。
その他で、アウトソールの種類や鳩目をつけたりといったことも選べます。
お値段は…
Goodyear Welt製法
¥121,000~ 税込
Handsewn Welted製法
¥137,500~ 税込
となっています。高いとは思いますが、コードバンをこの価格で手に入れられるのは実はお得です。
詳しくはラッドシューズのHPに書かれているのでそちらをご覧ください。
TIMEsHAND(タイムズハンド)について
こちらのタイムズハンドは新たな取り組みで、ラッドシューズの168Mラストの形状を最大限に生かすことを目的としています。
簡単にいえば、ハンドソーンウェルト製法で最高のシルエットのプレーントゥを作るといった取り組みです。
製法のところでも述べたとおり、製法によって同じ木型を使ってもシルエットが変わってきます。
上の写真を見れば一目瞭然かと思いますが、ハンドソーンウェルト製法で作ると、よりラストのシルエットを忠実に再現することができます。
そして使用している革はワインハイマー社ボックスカーフ(ブラック)のみとなっています。
こちらではコードバンを選ぶことはできません。
実は革によっても吊り込みのしやすが変わるようです。それは革の硬さによってです。
コードバンの方が革自体が硬く、カーフの方が柔らかいです。
ちなみにカーフは生後半年以内の仔牛の革になります。キメが細かく柔らかさのある革です。
柔らかさのあるカーフは吊り込みがしやすく、ラストに沿ってくれます。
ということで…
- プレーントゥのデザイン
- ハンドソーンウェルト製法
- ボックスカーフ
この3つの要素が掛け合わさって、168Mラストのシルエットを最大限に表現しています。
個人的にはプレーントゥは好きなデザイン。
実際に試着もしました。
正直すごく欲しいです
究極のプレーントゥと呼んでも良いと思います。
お値段は71,500円です。
プレーントゥの革靴が欲しいと思っている方はぜひチェックしてみてください。
まとめ
ラッドシューズはいかがだったでしょうか。
非常にこだわり満載の革靴です。
この記事を見て欲しくなった方はぜひラッドシューズのお店に足を運んでみてください。
ちなみにラッドシューズのお店は月に5日しかオープンしていません。また予約制となっています。
HPを見るとオープン日と予約方法が載っていますので、気になる方はそちらをご覧ください。
ディレクターの川村さんが丁寧に接客してくれますし、この記事に書いてあるこだわりポイントなどを直接聞くことができます。
またフィッティングサンプルがあり、普通の歩き方で試着することもできます。
気になる方はラッドシューズのお店に足を運んでみてください。
ということで今回はこの辺で。
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